企業のマネージャーやリーダーは企業の利益向上やプロジェクトの目標達成のために、納期の遅延なくプロジェクトを完遂させることが大切であり、そのためにチームが円滑に業務を進められるように管理する必要があります。そしてお客様に納品する成果物についてもより良い品質を担保する必要もあります。
そのためマネージャーやリーダーは責任が重く業務量も多いです。そこで管理業務の洗い出しとその業務にかかる工数を把握し、削減できそうな工数は削減するべきでしょう。管理工数を削減できれば生産性の向上や人件費などのコスト削減にも繋げることができます。
目次
管理工数とは
そもそも管理工数とは何かについて解説します。
管理工数とは
管理工数とはプロジェクト管理の業務として発生するタスクに対して、そのタスクを完了させるまでにどれくらいの人数と時間がかかるのかの指標のことです。
例えば、プロジェクトのスケジュールを管理するためにスケジュール表を作成したとします。この時、プロジェクトのリーダー1人でスケジュールを作成し、8時間かかったのであれば管理工数は8時間(1人×8時間)となります。
また、IT企業で工数を表す単位として多く使用されているのが「人日」と「人月」というものです。
人日とは1人が1日作業を行いこなすことができる工数のことで、タスクをこなすのに1人で2日かかるのであればそのタスクの工数は2人日(1人×2日)、3人で4日かかるのであればそのタスクの工数は12人日(3人×4日)となります。
人月とは1人が1カ月作業を行いこなすことができる工数のことで、このとき1ヶ月は20日と考えることが多いです。タスクをこなすのに1人で40日かかるのであればそのタスクの工数は2人月(1人×40日/20日)、3人で40日かかるのであればそのタスクの工数は6人月(3人×40日/20日)となります。
プロジェクト管理とは
プロジェクト管理とはプロジェクトを成功に導くためにプロジェクト全体を管理することです。プロジェクト管理に関するノウハウや手法をまとめたものに「PMBOK」というものがありますが、このPMBOKを参考にプロジェクト管理を行うことで、プロジェクトをスムーズに遂行することが可能となります。
プロジェクト管理における具体的作業
PMBOKではプロジェクト管理の項目を以下の10項目に分けています。
①統合管理
統合管理は以下で解説するPMBOKの他の9つの管理項目を統合し、プロジェクト全体を管理することです。プロジェクト全体に問題がないか、問題があれば調節する必要があります。
②コスト管理
コスト管理はプロジェクトにかかるコストを管理することです。プロジェクトの予算内でコストが収まるように調節し可能な限り最小限のコストにすることが重要です。コスト管理ができていなければプロジェクトで得られる利益が減少してしまいます。
③調達管理
調達管理はプロジェクトで必要となるサービスやプロダクトについて管理します。調達先の選定から調達物の納品までを調整する必要があります。調達管理ができていなければプロジェクトをスムーズに遂行することができなくなる恐れがあります。
④リスク管理
リスク管理はプロジェクトを遂行するにあたって起こり得るリスクについて管理します。起こり得るリスクについて回避もしくはリスクを最小限にするための対策を立てます。リスクによっては、プロジェクトの利益が確保できなくなってしまったり、プロジェクトが破綻してしまったりする可能性があるため、さまざまなケースを想定し考えられるリスクを洗い出します。
⑤スコープ管理
スコープ管理はプロジェクトを実施するうえでの対応範囲を管理します。プロジェクトを成功させるために必要なタスクや納品物を定めることが必要です。また、スコープ管理はPMBOKの管理項目の中でも最も重要な管理作業となります。スコープ管理ができていなければスケジュールも立てられなければ、品質の担保もできなく他の管理項目にも影響が出てしまいます。
⑥資源管理
資源管理はプロジェクトに必要なヒトやモノの資源を調達し管理します。プロジェクトを遂行するために必要な人材の確保やソフトウェア、機器などのモノを揃えることは必要不可欠であり、それらの資源はプロジェクトの成功を大きく左右します。資源管理ができていなければプロジェクトを開始することも難しいでしょう。
⑦コミュニケーション管理
コミュニケーション管理はステークホルダーとのコミュニケーションを管理します。ステークホルダーとのコミュニケーションが取れないとプロジェクトがスムーズに進行できない場合があります。
⑧スケジュール管理
スケジュール管理はプロジェクトを成功させるためにスケジュールや工数を管理します。スケジュール管理ができていなければ、遅延する可能性が高くなりプロジェクトが炎上し兼ねません。最悪の場合、賠償金の請求やプロジェクト破綻に繋がってしまう恐れもあります。
⑨品質管理
品質管理はプロジェクトの成果物の品質を担保するために管理します。求められた成果物を納品できなければプロジェクトの成功とは言えないため品質を管理することはとても重要です。
⑩ステークホルダー管理
ステークホルダー管理はステークホルダーとより良い関係性の構築や、ステークホルダーにとって必要な情報を収集し保管や伝達をします。プロジェクトによってはステークホルダーの理解がないとプロジェクト成功とは言えない場合があるためステークホルダーとの関係性は大切です。
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工数を管理する重要性
工数を管理することは重要なのでしょうか。以下では工数管理の重要性と工数を管理しないと起こり得るリスクについて解説します。
工数管理の重要性
工数管理は企業の利益率向上に大きく貢献するためプロジェクトを推進する上で最も重要な業務です。業務ごとにどれくらいの工数がかかっているか、チームメンバーの工数を把握することによって無駄を見つけ出すことができ、無駄を排除することで工数やコストの削減に繋がり利益率が向上します。
その他、利益率の向上以外で工数管理を行うことのメリットとして以下が挙げられます。
スケジュールの管理がしやすくなる
工数を管理できていればより精度の高い工数見積りとスケジュールを作成することができ、作業進捗の遅延を防ぐことができます。また、進捗が芳しくない場合も迅速に対処することができるようになります。
チームメンバーの負荷分散ができる
チームメンバーのそれぞれの作業工数を把握することで、どのチームメンバーに作業の負荷が集中しているのか、手が空く時間があるチームメンバーがいるのかが明確になります。そのため、うまく作業分担を行うことができチームとしての作業効率の向上が期待できます。
工数管理を怠ることで起きるリスク
工数管理を怠ってしまうと以下のようなリスクが発生する可能性が高くなります。
利益の減少
工数管理の主な目的として、プロジェクトで掲げる目標通りに利益を確保することです。ですが、工数管理を怠ると、想定していた工数と実際に作業にかかった工数で大幅な差異が生まれたり、問題の発見が遅れたりなどで納期遅延が発生する可能性が高まります。その結果、最終的に企業の利益を損なう恐れがあります。
人件費の増加
チームメンバーの作業工数を把握しない場合、作業の負荷分散が行えません。負荷の高いチームメンバーがいる一方で、手が空いてしまっているチームメンバーがいるなどの状況が発生しやすくなります。
その場合、生産性が下がり余計な人件費がかかってしまうでしょう。また、作業負荷が高いチームメンバーは仕事に対するモチベーションがなくなったり、欠勤が増えたりするなどのリスクもあり、さらに生産性が下がる原因となってしまいます。
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管理工数の見積り方法
管理工数を見積もるために必要な、4つの手順について解説します。
見積り手順1.作業項目を整理する
本記事2章の「プロジェクト管理における具体的作業」を参考に実際の作業を整理し一覧化することが必要です。ここで一覧化する作業は可能な限り細分化することが重要です。
例えば、進捗管理において定期的な会議があるのであれば、すべての会議を洗い出すことが重要です。すべての会議を洗い出しそれぞれの会議について工数を管理することにより、効果的でない不要な会議をなくすことや、会議内容の改善を図ることが可能となります。
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見積り手順2.整理した作業項目それぞれに対し工数を精緻化する
整理した作業について実際に要している時間を計算してみましょう。例えば、プロジェクト終了までの5カ月(20週)で毎週金曜日に1時間の進捗確認のための会議をチームメンバー5人で実施する場合、20週×1時間×5人=100時間となります。このようにそれぞれの作業に対し、何人で何時間かかるかを計算してみましょう。
また、取引先とのコミュニケーションや急な接待など想定外の作業が発生する場合やチームメンバーそれぞれのスキルによって工数が異なることなども考慮し工数を見積もることも重要です。
そして、各作業について見積りした工数の10~15%を管理工数として追加しましょう。整理した作業の中でも工数が比較的小さい作業は管理工数を10%上乗せ、工数が比較的大きい作業は管理工数を15%上乗せするのがよいでしょう。
また、管理工数が作業の見積り工数の10%未満であれば実績工数が見積り工数を超過してしまう恐れがあり、管理工数が作業の見積り工数の15%超であれば管理作業に工数がかかりすぎということが言えます。
たとえば、工数が20時間の作業であれば管理工数2時間(作業の見積り工数20時間×10%)を追加した22時間、工数が100時間の作業であれば管理工数15時間(作業の見積り工数100時間×15%)を追加した115時間と管理工数を含めた作業工数として予算の見積りやスケジュール作成を行うようにしましょう。
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見積り手順3.工数の把握と検討
整理した作業項目について工数を計算できたらどの管理業務に多くの工数を要しているかを把握しましょう。このとき、PMBOKの10の管理業務を大区分としてどの管理業務の工数が多いかを把握することが重要です。
そしてどの業務に無駄がありそうか、どれくらいの工数が削減できそうかを検討しましょう。
見積り手順4.見積り工数のレビュー、見直し
見積もった工数は、過去の実績工数から算出したり、予測の工数で算出したりするため、正確ではなく見積り工数と実際の工数は合わないのは当然です。そのため、整理した作業項目について一通り工数見積りが終わったら他のチームメンバーや上長とレビューをすることが重要です。また、定期的にチームの作業状況を確認し見積りした工数とずれがあれば見積り工数やスケジュールを見直すことも重要です。
見積り工数のレビューや見直しを何度も行うことにより、工数見積りの精度が徐々に高まっていくでしょう。
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管理工数を削減するための考え方
工数の削減を考えるにあたってECRSの4原則といった考え方があります。ECRSとは、「Eliminate(排除)」、「Combine(結合)」、「Rearrange(交換)」、「Simplify(簡素化)」の4単語の頭文字を組み合わせたものです。どう工数を削減するか検討する場合はこのECRSの4原則を基に検討することが工数削減への最短ルートです。ここではそのECRSの4原則について解説します。
Eliminate(排除)
工数の削減で最も効果的なのが業務そのものを排除することです。すなわち目的が不透明な業務や業務自体が不要であるものを見つけ出しその業務をなくすことができれば、その業務にかかっていた工数をまるごと削減できます。
そのため、現在行っている業務を洗い出し、それぞれの業務に対し目的の再確認をすることが重要です。
また、自社の業務をベンダーなどに外注することで業務の排除を行うこともできます。しかしベンダーなどへの業務の外注が自社のコスト削減に効果的でなければ業務の排除を行えたとしても本末転倒となってしまいます。
業務を外注するのが効果的であるかどうかは、業務を排除することによって削減できるコストと外注にかかるコストを比較し十分に検討することが重要です。
Combine(結合)
業務を組み合わせることによって工数を削減できる場合があります。たとえば、2名が同じような業務を行っていたとすればその業務を組み合わせることによって、1人分の業務のみで済むのであれば単純に工数を半分に削減できることになります。
また、業務を組み合わせるだけでなく、業務を分割することで工数を削減できる場合もあります。たとえば、複雑な業務で大きな工数を費やしている業務であった場合、その業務を2つの業務に分割し2名がかりで実施することによって複雑であった業務を効率的に行えるようになる可能性があります。
業務を実施する人数が増えても総合的な工数が削減できるのであれば、業務の分割は有効だと言えるため積極的に検討するべきです。
業務の詳細な手順を整理し、似たような業務を組み合わせるなどの検討や、業務を分割することで効率的になるかを検討することが重要です。
Rearrange(交換)
業務について担当者の変更、手順の変更、使用ツールの変更などを行うことにより工数削減に効果がある場合も多いです。たとえば、担当者の変更であれば、業務に最適な人員をアサインし直すことにより作業スピードの向上が期待できます。
手順の変更であれば、テストの工程を最後ではなく少し前の工程で実施することにより、早期に不具合を発見することができ、その後の作業が無駄になるのを防ぐことができる場合があります。
使用ツールの変更であれば、古いシステムを最新のシステムに入れ替えることにより、システムの新機能やシステムの性能向上により業務スピードや業務効率が上がります。
業務に関係のある、あらゆるヒトやモノなどの資源や作業手順を見直し、それらを入れ替えることを検討することも重要です。
Simplify(簡素化)
業務を簡単にすることも工数削減には非常に効果的です。たとえば、業務の一部を自動化する仕組みにして作業手順を削減したり、手動で実施している業務にITツールを導入したりなどで作業手順を簡単にできる場合があります。また、業務を簡単にすることは工数の削減だけでなく生産性の向上も期待できるため、簡単にできそうな業務は積極的に見つけ出し検討するべきです。
管理工数の削減には工数管理ツールを導入しよう
管理工数を削減する方法はいくつもありますが、ITツールを導入することが最もおすすめです。ITツールの導入は費用対効果が高いことが多く、生産性の向上及び総合的なコストと工数を大幅に削減することができます。この章ではどのようなITツールを選定すればよいのかについて解説します。
工数管理ツールの選び方
工数管理ツールを導入するといっても多くの工数管理ツールが存在する中でどのツールを選べばいいのか悩むでしょう。工数管理ツールを一度導入してしまうと使い勝手が悪く他のツールに変更したくても、選定のし直しや教育コストなどが発生することになります。
そのため工数管理ツールの選定は十分に調査し複数のツールを比較した上で決定するようにしましょう。また工数管理ツールを選定するポイントとして次の3つを考慮することをおすすめします。
選定ポイント1.工数入力が簡単であること
工数の入力はチームメンバー全員が毎日行うことが望ましいです。しかし工数の入力が複雑であったりUIがわかりづらいと工数入力を怠ったり適当に工数入力をするチームメンバーが出てくることがあります。そのため毎日行う工数入力はより簡単でわかりやすいツールを選定することをおすすめします。
選定ポイント2.ガントチャート機能があること
ガントチャートはプロジェクトのスケジュール感をチームで把握するためにとても便利な機能です。ガントチャートがあることで、進捗状況を可視化でき進捗の遅れを確認しすぐに対処しやすくなります。そのため、ガントチャート機能を利用できる工数管理ツールを選定することをおすすめします。
関連記事:工程管理においてガントチャートを利用することの効果とメリット!
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選定ポイント3.資産やコストの管理ができること
プロジェクト推進にかかるソフトウェアや機器などの資産とその他プロジェクトに関わるコストの収支が管理できる工数管理ツールであれば、プロジェクトの利益率向上の手助けとなります。
プロジェクトがスムーズに遂行できていたとしてもコストの管理を怠ってしまっていた場合、支出が多く最終的に利益が確保できなくなる恐れがあります。そのため、プロジェクトに関わる資産やコストを管理できる工数管理ツールを選定し、プロジェクトに関わる収支を工数管理ツールに入力しておくことでコストの流れを常に確認できるようにしておき、利益が減少するリスクを減らすようにしておきましょう。
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まとめ
工数を管理することはプロジェクトを成功させ、より多くの利益を確保するためにとても重要な業務です。そして工数の管理には工数管理ツールを導入することが最もよい効果を出せる方法です。
工数管理ツールを導入する場合、工数、コスト、分析機能などのように、効率的な業務推進と業務改善をサポートしてくれるようなツールを選定することがおすすめです。
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