株式会社タツノは、国内のガソリン計量機市場で約6割ものトップシェアを持ち、110年以上にわたり全国のエネルギー供給インフラを支えてきた総合エンジニアリング企業です。
近年設置された営業プロセス戦略準備室では、全国800名の営業担当者の業務実態把握と過重労働対策を目的に工数管理を開始しましたが、多大な入力負荷や集計の非効率性など運用面での課題に直面していました。そこでクラウドログを運用開始したところ、入力率が飛躍的に向上し、信用性の高いデータが収集できるようになり、今後の業務改革推進に向けた道筋が見えてきたと言います。クラウドログの導入、社内での啓発につとめてきた営業プロセス戦略準備室のメンバーにここまでの成果と運用の工夫について、お聞きしました。

営業プロセス戦略準備室 室長 新村毅
営業プロセス戦略準備室 課長 加城佳一
営業プロセス戦略準備室 大野寛人
背景
- 機器設置や修理など幅広い業務に対し、工数の内訳が見えず適切な人員配置が困難だった
- 予定外の業務も多く、現場のリソースが逼迫することに危機感があった
- スプレッドシートでの工数管理を試みたが、入力や集計の負担が大きく非現実的だった
決め手
- カレンダー表示が分かりやすく、直感的な操作で入力負担を大幅に削減できると判断
- 基幹システムとのデータ連携により、案件IDの自動紐付けが可能で二重入力が不要
- 迅速なサポート体制で、導入・運用の不安を解消
- 4支店でのテスト運用で入力率が大幅改善し、現場から好評価を得られた
効果
- 入力達成率が30%→95%に向上し、全社の工数データ収集基盤が確立
- 1日の入力時間が30分から15分に半減し、現場の負担を軽減
- 100項目に細分化した業務分析により、社内処理や移動時間の無駄を可視化
- 勤怠データでは見えなかった実際の業務量を把握し、適切な人員配置への道筋が明確化
エネルギーインフラを支えるトップ企業ならではの責任
事業概要をご説明いただけますか。
新村:
当社は石油関連機器の製造を中心としたエネルギーインフラ企業として、110年以上の歴史を持っています。特にガソリン計量機は、国内市場の約6割というシェアを獲得しています。お客様は石油元売会社から地域密着型の特約店・販売店まで幅広く、全国のガソリンスタンドをはじめ、漁港の船舶給油所やマリーナ、自衛隊、原子力発電所など、あらゆる施設にサービスを提供しています。
工数管理に取り組むようになった背景をお聞かせください。
新村:
全国で800名もの営業現場のスタッフが、各地のお客様のニーズに応えるため日々業務にあたっています。その業務は機器の販売にとどまらず、設置工事や定期保守、さらには修理対応まで幅広くカバーしています。こうした中で緊急の要請が入ると、予定していた業務を後回しにせざるを得ません。その結果、お客様からは頼られる存在である一方で、想定外の業務が積み重なり、現場によっては過重労働となっていました。これは「働きやすさを追求する」という経営方針にも反する状況だったため、業務を改善するためにまず業務内容や業務量を正確に把握する必要があると判断しました。
加城:
そこで2024年4月に、各支店の営業業務の効率化と過重労働対策の推進をミッションとして、営業プロセス戦略準備室が立ち上がりました。まず実態把握のために、スプレッドシートでの工数管理を開始したという経緯があります。

二重入力と集計負荷により、入力率の低さが課題だった
スプレッドシートでの工数管理にはどのような課題がありましたか。
加城:
当社では、各拠点で標準労働時間以上の工数を入力することを目標として設定しています。その達成状況を把握するため、4ヶ月間にわたり試験運用を行いましたが、入力達成率(標準労働時間以上の工数入力を達成した拠点数/全拠点数)は低迷し、開始当初で約30%、最終月でも約60%にとどまっていました。案件名、金額、受注台数など入力項目が多く、さらに基幹システムとスプレッドシートへの二重入力が必要だったため、現場には大きな負担となっていたのです。
ファイルも各拠点・部署ごとに分かれ、その総数は約90個にのぼり、それらを統合・集計するのに2〜3日を要していました。月末の集計作業には土日も充てざるを得ない状況で、リアルタイムな状況把握はとても不可能でした。
大野:
集計を少しでも効率的にしようと関数を多用した結果、ファイルが常に重くなり、スマートフォンからは開けないような状態になっていました。そのため、外出先の営業担当者は入力したくてもできず、現場からは不満が相次いでいました。このままでは継続困難と判断し、本格的な工数管理システムの導入検討を開始したという流れです。

直感的な操作性と効率的な集計機能に加え、サポート体制の安心感が決め手に
クラウドログを知った際の印象をお聞かせください。
大野:
Googleカレンダーと同様の表示形式で見やすいことや、ドラッグ&ドロップで直感的に入力できるのも当社になじみやすいのではないかと感じました。また、外出先の営業担当者がスマートフォンから入力しやすいような操作性も魅力的でした。
他社製品と検討するなかで、クラウドログを選んだ経緯を教えてください。
加城:
当初は、社内のITコンサルタントから海外企業の製品を推奨されたこともあり、先行して検討を進めていました。ところが、その製品は英語ベースのインターフェースで、年齢層が比較的高い当社社員には使いづらいと試用段階で感じました。さらに、サポートも英語対応のみであり、トラブル発生時の対応に不安が残ったことも、導入を躊躇した大きな要因の一つです。
新村:
費用面ではクラウドログと大きな差はありませんでしたが、日本語のサポート体制という点でクラウドログの方が圧倒的に安心感がありました。基幹システムとのデータ連携により、案件IDが自動的に紐付けられ、集計作業の大幅な効率化が見込めましたし、操作性も優れていると感じていたため、クラウドログの採用を決定しました。
クラウドログを全社展開する前にテスト運用を実施されましたが、どのように進められましたか。
加城:
1ヶ月間のテスト運用を実施しました。すでに入力率が高かった支店や、逆に低かった支店、フォローアップを考慮して本社から移動しやすい支店という観点で関東圏と東海圏の4つの営業所を選びました。
大野:
テストの結果、4営業所すべてで入力率が明確に改善するなど、期待以上の効果が見られました。現場からの評価も非常に高かったため、迷うことなく全社展開に踏み切れました。

入力負荷は50%減。工数入力が現場に浸透し、効率化の意識も芽生えた
全社展開はスムーズに進みましたか。
加城:
テスト運用の翌月には全社展開に向けて動き出しました。1週間で、北海道から福岡まで全国8支店を訪問し、すべての営業職、サービスエンジニア職、事務職員を対象に説明会を実施しました。
新村:
展開を成功させるため、各支店に2名ずつ「クラウドログ アンバサダー」を任命したのも効果的だったように思います。アンバサダーが支店内での教育と一次的な問い合わせ対応を担当し、解決できない問題のみ当室に上げる段階的なサポート体制を構築しました。また、トップページに職種別の入力ガイドを掲載するなど、現場が迷わず入力できる環境整備に注力しました。
導入時のサポートはいかがでしたか。
大野:
クラウドログの営業担当者には、きめ細かなサポートをいただきました。当社の業務は多岐にわたるため、業務項目を約100項目まで細分化していますが、その際のシステム設定についても、当社の要望を伝えると具体的な実現方法を即座に提案してくれました。問い合せに関しての返答も常にスピーディにいただけており、日々の運用において大変助かっています。
導入後、どのような効果が得られましたか。
加城:
Googleカレンダーとの同期や基幹システムとのデータ連携により、大幅な省力化が実現しました。以前は1日30分かかっていた入力時間が、現在では15分、操作に慣れている従業員は10分程度に短縮されています。また、入力負荷が軽減されたことで、入力達成率も大幅に向上しています。スプレッドシートでは約30%だったものが、クラウドログ移行後は95%に達し、顕著な成果として現れています。
大野:
工数データが蓄積されることで、多くの発見がありました。特に社内処理業務に想定以上の時間を費やしていることが判明し、改善の必要性が明確になりました。移動効率の分析も興味深い結果を示しており、残業の多い従業員の移動ルートを分析すると、非効率的な動き方をしていることが明らかになりました。こうしたデータの可視化により、オンライン会議の活用など効率化の意識が現場に浸透し始めています。
目指すは工数データ活用による過重労働の解決
今後、クラウドログをどのように活用していきたいですか。
加城:
収集したデータを活用して、業務の取捨選択や人員配置の最適化を図り、本当に必要な業務に集中できる効率的な体制を構築していきたいです。いずれは案件ごとの利益管理を精緻化し、サービス価格の適正化まで提案することも見込んでいます。そのために、基幹システムとのさらに連携を強化し、より高度な分析を進めることが目標です。
新村:
私たちの最終目標は、全社的な過重労働の解決と持続的な事業成長の実現です。導入後から現在に至るまで、各拠点のキャパシティ超過状況や、個人単位の残業要因分析などを行い、業務実態をかなり正確に把握できるようになりました。今後は分析結果をもとに、具体的な改善施策を実施し、効果検証をしていくフェーズです。クラウドログで継続的にモニタリングしながら、目標達成に向けて推進していきます。
工数管理を検討している企業へのメッセージをお願いします。
新村:
いまや、データなしでは語れない時代です。感覚や直感に基づく説明と、確かなデータに裏付けられた提案とでは、経営層への説得力が大きく異なります。今回のクラウドログ導入を通じて、実態をデータで明らかにすることの重要性を改めて強く実感しました。
もっとも、ツールの導入はゴールではなくスタートにすぎません。データを収集・分析し、改善策を実行し、その効果を検証する、このサイクルを継続して回すことで、初めて真の業務改革が実現します。クラウドログは、そのプロセスを支える強力なパートナーになってくれるはずです。


株式会社タツノ
https://tatsuno-corporation.com/jp/
1911年5月
事業内容:国内のガソリン計量機市場で約6割ものトップシェアを持ち、110年以上にわたり全国のエネルギー供給インフラを支えてきた総合エンジニアリング企業
社員数:1,220名
資本金:4億8千万円



































